システムやWeb制作の費用が膨らむ最大の原因は「打合せ回数」です。 制作そのものよりも、調整・会議・議事録・プロトタイプ修正といった“周辺作業”によって、最終的な請求額が数倍に膨らむケースは珍しくありません。 本記事では、実際にあった医療系システムの2つの事例をもとに、打合せ回数がどれほどコストを左右するかをわかりやすく解説します。

医療システムでは病歴などを含む要配慮個人情報を扱うためシステム制作の費用が高額になるかと思われがちですが、
実際には要配慮個人情報を扱わないシステムでも高額になりがちです。

それはシステム制作の打ち合わせ回数が他の業務システムに比べて非常に多く、医者、看護師、技師、事務員など、関連職種が多い上に、それぞれ業種で確認したい情報がことなるため画面設計で揉めることで打合せが長引いてしまうことが原因です。


1. 打合せが増えると、なぜ費用が跳ね上がるのか

制作費用=実装時間 × 技術単価 ではありません。

実際の費用は、下記の総和によって決まります。

  • 打合せ準備(議題整理、事前検討)
  • 打合せそのものの時間
  • 打合せ後の議事録作成
  • 要望を反映した修正作業
  • 修正内容の再確認
  • 移動・交通費(対面の場合)
  • プロトタイプの作り直し
  • 決裁者の変更対応

つまり、システム制作時間が1日で終わるような内容でも、打合せが10回あれば、周辺作業だけで制作費を簡単に超えてしまうわけです。


2. 事例①:制作時間は「1日」でも、打合せ10回で50万円超に

医療系システム(会議×10回・制作1日)

  • ※実際にあった案件をベースに再構成

概要 医療系の内部向けシステム開発。 システムそのものは非常にシンプルで、制作にかかった時間は合計でも「1日程度」。

しかし、毎週1時間の会議が約2ヶ月続き、打合せ10回に。

1回あたりのコスト(交通費・準備・議事録含む) 約2万円

結果的な費用構成

  • システム制作費:12万円
  • 打合せコスト:2万円 × 10回 = 20万円
  • プロトタイプ修正や議事録など周辺作業:20万円超

最終的な請求額:50万円強

このケースでは、実装よりも打合せが3倍以上のコストを占めた典型例と言えます。


3. 事例②:打合せ2回で済み、費用は「8万円のみ」

相談支援システムのデータ移行案件

既存の相談支援データを、新システムに移行する前提で相談がありました。しかし、ヒアリングを進めると…

  • 新システム(電子カルテ付属)はデータ構造が大きく異なる
  • 変換してもインポートできる仕組みが存在しない

という事実が導入決定後に発覚。

そのため、 ・相談記録のみ新システムに移行既存相談データは参照専用システムとして残す という構成に変更。

打合せ回数が少なく済んだ理由

  • 医療システムとして病院承認の必要がなく、現場判断でOK
  • データ参照のみで、書き込み機能がない
  • ヒアリング1回、プロトタイプ確認1回の合計2回で完了

費用

  • システム制作費:8万円
  • 打合せ費:ほぼゼロ(現地確認・納品作業に付随)

合計:8万円

同じ医療システムでも、打合せの少なさと機能の簡易化で、 前例の1/5以下の費用で完了した好例です。


4. なぜここまで費用差が出るのか:打合せの「本当のコスト」

会議1時間の裏には、実は次のような“見えない工数”が存在します。

  • 会議準備:30〜60分
  • 資料作成:1〜3時間
  • 移動時間:往復2.5時間
  • 議事録作成:30〜90分(修正が入れば更に追加)
  • 会議内容反映のシステム修正:1〜4時間
  • 再確認準備:30〜60分

会議1回の実質工数:4〜10時間

仮に技術単価を時給4,000円とすると…

会議1回=16,000円〜40,000円相当

これが10回あれば、 会議だけで16〜40万円。

制作よりも、会議がコストの中心になりやすい理由がこれです。

弊社の場合はプロトタイプ開発をベースにしているため、どのようなシステムでも実際に確認いただける形で持ち込み、それを動作させながら打ち合わせを行います。 ですがこれが出来ない場合、実際に出来上がってから「思っていたのと違う」ということが発生し、システム全体の作り直しなど、さらに高コスト化してしまいます。

都度システムを修正しているため、「その修正を繰り返すことでコストが上がるので最終決定してからシステムを作ってほしい」という意見をいただくこともあります。 ですがそれは、私の経験から「その最終決定したシステムがプロトタイプと同じになり、そこからシステム修正をすることになり更に高コスト化、制作期間の延長に繋がる」とお伝えさせていただいております。


5. 打合せ回数を減らすだけで、制作費は「半額以下」も可能

事例からも次の事実が明らかです。

  1. 制作費(実装)はそこまで高くないことが多い
  2. 打合せを減らせば総額は大幅に下がる
  3. 必要な機能を整理するとシステム規模が1/5以下になる場合もある

特に…

データの「書き込み」が発生するかどうか

ここで費用は劇的に変わります。

  • 書き込みあり →
  • 整合性チェック、排他処理、ログ、セキュリティ、検証工程… など、医療システムは他のシステムと違って何倍もチェック体制が必要になります。 規模は5倍以上に膨らみやすい

  • 参照のみ →
  • バグが起きにくく、安全性も高く、機能もシンプル 費用は大幅に下がる

事例②のように「参照だけ」に割り切ったことで、8万円で済んだわけです。


6. コストを最適化するために、発注側ができる工夫

発注者側の工夫だけで、費用は驚くほど下がります。

1. 要件を事前に整理しておく

打合せ1回分を丸ごと削減できる。

2. 決裁者を明確にする

途中で意見が変わると、何度も修正が発生する。 システム制作業者が入らない打合せで意思決定を行い、それをシステム業者に連絡する体制を確保する。

3. 機能を「必須」と「できれば」に分ける

オプション機能が減り、シンプルにできる。

4. 画面例・操作イメージを用意する

言葉のズレをなくし、打合せ時間が半分以下になる。

5. 書き込みが必要かどうかを一度見直す

参照のみで業務が成立するなら、費用は劇的に下がる。


まとめ:打合せ回数は「最大のコスト要因」。減らすだけで総額が1/3〜1/5になる

  • 制作そのものより、会議や調整が費用を押し上げる
  • 打合せが10回あると、制作費を超えることが多い
  • 逆に、打合せを2回に抑えるだけで費用は半額以下になる
  • 機能を“参照だけ”に切り替えると、1/5の費用で済むこともある

最もコストパフォーマンスの良いシステムは、実装がシンプルで、打合せが最小限のものです。

制作側と発注側が、最初の段階で「打合せをどれだけ効率化できるか」を共有することで、無駄のない、質の高いシステム開発が可能になります。